今、65歳男性の平均余命は18年、女性は23年あります。老後というには長い年月の第二の人生を、どう暮らすかをこのコラムで考えてきました。今回は第3回。子供と暮らすというのがテーマです。いまどきそんなことは考えてもいない、とおっしゃる方が多いと思いますが、少し前までは当たり前だったことを思い起こしてみましょう。
下の表では、豊橋技術科学大学名誉教授の三宅醇先生の推計値を基に、家族と一緒に住む高齢者(施設居住、一人住まい、夫婦のみ、を除いたもの)の割合を経年変化で見てみました。
高齢者のうち家族と一緒に居住する割合(%) | ||||
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1985年 | 1995年 | 2010年 | 2025年 | |
前期高齢者 | 62.8 | 60.9 | 36.4 | 21.3 |
後期高齢者 | 78.6 | 62.2 | 48.3 | 34.5 |
20年前の1985年には後期高齢者の8割、前期高齢者でも6割は家族居住していたのです。85年当時の75歳は1910年(明治43年)生れ、65歳は1920年(大正9年)生れになり、この世代の人たちはこんな風に老後を暮らしていたことが分かります。それが2000年ごろを境に急速に変化し、20年後の2025年には家族居住は後期高齢者で3割強、前期高齢者では2割になると三宅先生は推計しています。
一昨年当研究所が行った団塊世代(2025年には後期高齢者に差しかかる世代)の調査でも、希望としては「子供と同居・隣居を望む」が2割強、予測としては「結果的にそうなると思う」が3割で、上の推計とほぼ同じ割合です。家族居住が減少していく傾向ははっきりしているようです。
子供や子供世帯と一緒に暮らすのは、かえって気苦労が多いというのが現在の多数意見ですが、高齢者の独居や夫婦のみ世帯に不安が付きまとうのも事実。減っているとはいえ、子供との同居が有力な選択肢であることには変わりがありません。
同居のパターンは大きく分けて三つあります。第一は子供が世帯分離せずにずっと一緒に暮らすケース。第二は一度世帯分離した子供(世帯)が戻って同居するケース。第三は子供の元に引き取られるケース。従来は第一のケースが多かったのですが、今後は第二のケースの可能性が大きくなりそうです。前回のコラムで紹介したように高齢者の持家率は高く、住居規模もまあまあです。しかし、同居の意向はあっても、タイミングに問題があります。
高齢者のみ居住が不安になるのは後期高齢期ですが、その頃は子世帯は働き盛りで、子育ても大変な時。転居が難しいままタイミングを逸したという話はよく聞きます。子世帯が転居し易い時には、親がまだ元気で同居の必要が感じられない。この辺のタイミングのずれが子供世帯との同居の難しさですが、早めに決断した方が実現し易いようです。
都市生活研究所 鎌田 一夫