高齢期=第二の人生を何処で暮らすのかを考えてきましたが、今回は故郷に帰る、Uターンという居住パターンについて見てみましょう。
図-1は、 2004年に当都市生活研究所が首都圏の団塊世代を対象に行った調査の中で、「老後にもっとも住みたいと思う場所は?」という設問の結果です。故郷に帰るという回答は団塊世代の男性で5%弱、その他の属性では2%程度に留まっています。回答者の中には現在の地域で生まれ育ち、故郷のない人も含まれており、故郷のある人に限れば回答率はもう少し高くなるでしょうが、いずれにしても「故郷に帰る」という志向はそれ程強くないといえます。
図-1
また、この調査結果から女性は男性に比べて「現在の地域」や「地域の中心都市」への志向が強いことが分かります。在宅時間が長く、子育てなどを通して女性は地域に根を張った生活をしている反映と考えられます。夫婦間での地域に対する愛着度の差は、第二の人生の暮らし方にも大きな影響をおよぼします。実家を相続したのを機に故郷に戻ろうと思っても奥さんの反対で実現しない、という話はよく聞きます。
では次に、Uターンの実態を別の角度から見てみましょう。図-2は国立社会保障・人口問題研究所が行った第5回人口移動調査(2001年実施)のデータを引用して作表したものです。ここでUターンとは県外に転出した後、出生県に戻るという移動パターンをいいます。県単位の移動を対象にした全国平均で、大都市圏と地方とのUターン以外も含んでいます。Uターン率(1)は県外へ転出した人のうちUターンした人の割合、Uターン率(2)は全人口に対する割合です。男性のUターン率(1)は平均約3割です。日本全体で見ると結構高い割合で故郷に戻っているといえそうです。
図-2
年齢別に見ると、40歳未満と55歳~69歳でUターン率が低くなっています。前者は加齢に従って故郷に戻っていく可能性があります。後者は高度成長期に大都市圏に転出した年齢層(団塊世代を含む)で、大都市圏に留まっている実態が分かります。前述した当研究所の意識調査の結果とも符合しています。意識調査では「自然の豊かなところ」は高いポイントでしたが、都市化が進んだ日本では故郷は必ずしも自然が豊かではないということなのでしょう。
ところが、自らは望まなくても親の面倒を見るとか、実家を相続し維持しなければならないといった外因が生じる場合もあります。団塊世代前後の年齢層では、今後こうしたケースが増えるでしょうが、そこでは完全なUターンではない対処も考えられます。次回は生活拠点を複数持つ居住パターンを考えてみたいと思います。