10月も半ばに入り幾分すごしやすい季節となってきました。
このところニュースでは、厚生年金の支給開始年齢の引き上げ議論についての話題が連日続いていますが、特に68~70歳支給開始案については世間の反響も大きくなっています。
厚生年金の支給開始年齢の変遷をみてみると、昭和19年の厚生年金保険法発足当初は55歳でしたが、平成12年までの数回の改正により65歳に向けて徐々に支給開始年齢が引き上げられている状況です。一方で、日本人の平均寿命をみると、平成22年次の平均寿命は男性79.6歳、女性86.4歳となっています。
年金支給開始年齢とあわせてみると下図のようになり、平均で15年から24年超は年金を受け取って生活をする可能性があることがわかります。高齢期の生活にとって、年金制度のあり方はとても重要な問題です。(図1)
図1 平均寿命の年次推移と支給年齢
都市生活研究所が行なっている生活定点観測調査では、高齢期の生活に対する意識について以下のような傾向がみられます。
図2 あなたは「高齢期の生活」に対して不安がありますか。
図3 【「高齢期の生活」に対して不安がある】最も不安なもの
高齢期の生活に対する「不安」は、99年からのトレンドとしてほぼ増加傾向となっていますが(図2)、その不安要素についてみてみると、「健康面」に関する不安が最も高く、次いで「金銭面」となっています。この傾向は99年から変わっていませんが、近年になるほど相対的に「金銭面」での不安が増加していることがわかります。(図3)
また、同じく生活定点観測調査による設問で「高齢になっても収入を伴う仕事をしたい」との問には、約6割の人が「したい」(あてはまる+ややあてはまる)と回答しています。
このような変化は、昨今の経済状況の影響が大きいことが考えられますが、こうした年金制度の先行き感に対する影響も少なからずあるのではないでしょうか。
少子高齢化の進展によって労働力人口の減少が見込まれる現在、高齢期の生活を年金だけで支えていくことはますます難しくなってくることが考えられます。
年金制度とともに、労働人口の確保といった社会的な必要性や高齢期の就業ニーズの観点からも、今後の就労環境の整備・改革が高齢期の生活において重要な課題といえるでしょう。