今年の「敬老の日」は9月16日(月)です。かつては9月15日でしたが、現在は9月の第3月曜日。「敬老の日」に限らず、毎年祝日が違う日にやってくるこのシステム、いつになっても馴染めないのは私だけでしょうか?
さて、「敬老の日」とは、「多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」日とされています。高齢化が進む日本では、今後65歳以上の人口に占める割合は上昇し続け、2030年で31.6%、2050年には38.8%になると予想されています。(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」平成24年1月推計より)
つまり、従来「高齢者」と定義されてきた65歳以上の人口が、4割近くを占めるようになるのです。また、過去何十年か高齢化と過疎化が問題とされてきた地方に加え、今後は大都市圏で急速に高齢化が進むことが懸念されています。
人口構成的にはこのような現状ですが、「老人を敬う日」に、ご自分を敬われる対象である「老人」であると認識されている方は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか。都市生活研究所の調査結果から見ていきたいと思います。
2012年に実施した「生活分野別定点調査2012」では、「年齢意識」についての質問をしています。「どの呼び方が自分にあてはまると思うか」と聞いた中で、自分が「シニア」「高齢者」「おじいさん、おばあさん」「お年寄り」であると思う人の割合を示したものが、図1です。60代では自分を「シニア」、70代では「高齢者」と認識している人が多いことがわかります。ただし、男女差があり、70代では「高齢者」と思う男性約8割に対して女性は約6割、「おじいさん」と思う男性約4割に対し、「おばあさん」と思う女性は3割を切ります。
では、これらの呼び方は、何歳くらいからがふさわしいと思われているのでしょうか。
図2のように、「高齢者」は「70歳くらいから」が多いものの、女性70代では「75歳くらいから」の方が高くなっています。また、図3「お年寄り」については、男性40~60代では「70歳くらいから」と思う人が多いのですが、70代になると傾向が変わり、「75歳」「80歳以上」という回答が増えます。女性ではさらに高い年齢と考えられており、60代でも「80歳以上」という回答が最も多く、70代では半数近くの割合になっています。このように、「高齢者」も「お年寄り」も、「自分の年齢よりも上の人」と考える人が多いことがわかります。
「65歳以上」という定義の上では、高齢者が占める割合が増大し、街が高齢者であふれているはずの大都市圏ですが、実感としていかがでしょうか。前述の調査結果の通り、65歳前後の方々は、自分のことを「高齢者」とは思っていません。70 ~ 75歳を超えないと、「高齢者」ではないし、「お年寄り」と呼ばれるのは、80歳を超えてからで十分と考えています。
周囲にいらっしゃる方々を見ても、現在の60代~70代の方々は元気で若々しい人が多く、とても「高齢者」とは呼べない、ましてや「お年寄り」扱いなんてできない、と思う機会が多々あります。
ご本人の意識の面から見ても、周囲の認識から見ても、「65歳以上だけれども、高齢者ではない」方々が急速に増えているというのが、現状ではないでしょうか。ご自分を「お年寄り」や「老人」と自覚する人の割合は、今のところ思ったほど増えてはいない、と言えそうです。
もちろん現在は、団塊の世代と呼ばれる65~70歳の人口構成比が高いため、「65歳以上だけれども、高齢者ではない」方々が目立って感じられるのでしょう。15~20年後にはその方々がさらに高齢となり、「お年寄り」や「老人」と自他ともに認識する方が増えていることは、容易に想像されます。
けれども、もしかするとその頃には、「85歳以上だけれども、高齢者ではない」といえるような方も今よりずっと多くなっているかもしれません。現在の60代以上の方々は、非常に運動や栄養への意識が高く、次々と身体に良いことを取り入れて実践していることが、都市生活研究所のデータ(都市生活レポート「健康・美容に関する生活者の意識」)からもわかっているからです。
そのうちに、「敬老の日に堂々と祝ってもらうには、100歳は超えてないとね」という世の中になるかもしれません。そこまで頑張って祝ってほしいかどうかは、人それぞれ考え方次第ですが、いずれにしろ先はずいぶん長いなあと思う自分は、もうそんな歳なのか、まだまだそんな歳なのか、複雑な心境の「敬老の日」です。