今年も年の瀬を迎えました。この一年を振り返ると、年末恒例の新語・流行語大賞に4つの言葉が選出されたことにも表れているとおり、例年以上にいろいろな出来事があった一年だったと感じています。
約3年振りの政権交代の興奮冷めやらぬ中で幕を開けた平成25年。富士山の世界文化遺産登録、新型ロケット「イプシロン」打ち上げ成功、プロ野球の楽天イーグルス日本一など、私たちが明るく元気になる話題の一方で、猛暑、竜巻、ゲリラ豪雨などの自然災害が各地で発生するといった地球温暖化への懸念が深まる出来事もありました。
そんな中、私が今年一番印象に残っているのは、「2020年 東京オリンピック開催決定」です。7年後となる2020年のオリンピック開催に向けては、鉄道や道路など社会資本整備が一段と進み、また、スポーツや健康への関心増大、外国人観光客の増加により和食や風呂などの日本の独自文化が見直されたりと、生活者の暮らしや意識も大きく変化することが予想されます。私たち都市生活研究所も、そうした時代の変化をしっかりと見つめ、生活者にとっての価値ある暮らしを提言し続けていきたいと気持ちを新たにするところです。
ところで、東京オリンピックが開催される2020年、50歳代半ばになっている自分はいったいどういう生活を送っているのかと、ふと考えることがあります。そんな折、60歳前後の男女を対象に地域交流をテーマとしたグループインタビューを聞く機会がありました。
参加されていた皆さんは本当に活動的で各々の人生を楽しんでおられ、まさにアクティブシニアという表現がピタリと当てはまります。しかし、男女を比較すると女性の方が、様々な形で地域とのつながりを持ちながら、よりアクティブに活動している印象を受けました。確かに、有職男性は会社での生活が中心となり、仕事をしている間は、なかなか地域とのつながりを深めることは難しいと思われます。昨年度、都市生活研究所が団塊世代とほぼ同年代である1946年~1950年に生まれた人達(都市生活研究所の世代の定義では、「創食世代」に相当。2013年で63~67歳。)を対象とした調査においても、男性は退職後に「社会との接点がなくなった」と感じる割合が多いという結果が出ていました。
さらに、そうした男性と女性の意識・行動の違いから、退職を契機に妻が夫に対して自立を求める声も多く聞かれました。
震災後、地域コミュニティの重要性が指摘されていますが、その一方で多様なライフスタイルを持つ生活者が集う都市部では、地域のつながりが希薄化することも懸念されます。例えば、地域コミュニティ形成に大きな役割を果たしている自治会や町内会の活動において、会社経験の長いサラリーマンがその経験を活かして活躍する余地は大きいものがあると思います。仕事を離れ、配偶者に気を遣い、「自立」を目指す男性を地域にうまくつなぎ合わせていくことができれば、より活気ある良好な地域のつながりが生まれてくるのではないでしょうか。
2020年、東京で開催されるオリンピックを楽しみながら、私も定年退職後に妻に疎まれないよう、第二の人生についてそろそろ考え始めているかもしれません。