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血行促進がもたらす効能

 皆さん、「お風呂に浸かると、体が温まって血行が良くなる」ということは十分実感されていることだと思います。ではこの血行促進と体が温まる関係とはどうなっているのでしょうか?
 まずお風呂に入ると体は「暑さ」を感じとり、血液を介して熱を体の外に逃がそうとして血管を拡張させます。血管が拡張しますと血液が流れやすくなるので、血行が促進していきます。
 ここでもし周囲の温度が体温より低ければ熱を逃がすことができますが、お風呂ではそうはいきません。かえって血液が温められ、それが全身を巡るため、どんどんと体の芯まで温まっていきます。からだが芯まで温まっていくと、今度は「汗」で体を冷やそうとして、発汗が促進されていきます。
 このように皆さんが普段から実感されているとおり、お風呂ではまず血行が促進し、それにより体が芯まで温まることで、発汗が促進していきます。
 近年の研究では、この「お風呂の血行促進効果」が、ただ「体を温める」だけでなく「血管の機能を向上」させる効果もあるという報告があります。
 血管は年齢と共に「硬く」なり、拡張する力が低下することが知られています。「お風呂で血行を良くする」ことは、この低下する「血管拡張能力」を高める効果があるというものです。少し難しい説明をすると、お風呂で血行が促進されることにより、血管内皮が刺激を受け(shear stress)、その刺激で血管内皮の血管の弛緩・収縮物質(NO)合成酵素の働きが高まる、というものです(※)。このようにお風呂には血管年齢を若く保つ効果も期待できるかもしれません。
 ただし、ここで注意して頂きたいことは、急激な血圧低下による入浴事故です。
 お風呂に浸かることで血管が拡張しますと、その反動として急激な血圧の低下が引き起こされます。特に寒い冬場では、冷えた脱衣室・浴室で裸になることでのいわゆる寒冷曝露で、急激な血圧上昇が引き起こされます。このような急激な血圧の乱高下は、特に高齢者に対し強いショックを与えることになり危険です。
 このような急激な体の変化を避けるため、特にご高齢の方には、浴室・脱衣室を十分暖かくして、体に負担の少ない温めの半身浴で入浴されることをお勧めします。
このように、安全には十分気を付けて頂きながら、安心して「お風呂で健康増進」を楽しんで頂けたらと思います。

(※)鄭忠和「循環器心不全の非薬物療法 新たな治療法の選択肢」温熱療法Mebio第19巻・第1号、2002

都市生活研究所 山田 浩一郎

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