私は集合住宅に住んでいます。12月のある日、換気のために小窓を開けていたら、廊下でご近所さん同士が話している内容がところどころ聞こえてしまいました。ご近所さん同士はかなり仲が良く、どちらも年配の女性のようです。天候から始まって、野良猫対策に先日のボヤ騒ぎ等、話題はつきません。
ご近所さんたちはこの日、一時間以上もしゃべっていました。その間吹きさらしの廊下に立ちっぱなしです。外は寒いと思うのですが、二人にとっては、それ以上におしゃべりが楽しいし、大事な交流の時間だったということなのでしょう。
同じ集合住宅に住んでいても、近隣とあまり交流していない人もいれば、私のご近所さんたちのように、特定の人と親しく話をしている人たちもいます。集合住宅の「近所づきあい」はどのようになっているのでしょうか。
以下のデータは、戸数200戸以上の大規模集合住宅における近所づきあいの傾向を調べたものです。
近所づきあい人数が「非常に多い」~「ある程度」と答えた人の割合は、女性が48.6%と半数近いのに比べ、男性は30.3%と約20%の開きがあります。女性の方が近所づきあいに積極的なようです。
上図は先の点をさらに突き詰め、調査の対象を女性に絞った上で、近所づきあいの様子をライフステージごとに比較したものです。まず目をひくのは、"未婚単身"と"既婚夫婦2人"の結果です。「ご近所づきあいはまったくない(立ち話程度の知り合い:0人)」と答えた人が、"未婚単身"女性では60%にものぼります。"既婚夫婦2人"の女性でもあまり変わらず、近所づきあいのない人が56%です。
ところが、子どものいる世帯では大きく変わって、「ご近所づきあいは全くない」と答える女性は15%以下に減り、近所づきあい人数が増えます。子どもを通じて、近所づきあいが広がっていく様子が伺えます。
子育てを終える方が多くなると思われる、既婚50~69歳の女性では、近所づきあい人数は減りつつも、"未婚単身"と"既婚夫婦2人"ほどの人数までは減りません。そして、子どもが成長した後も継続する近所づきあいがあるようです。冒頭の、ご近所さん二人はこの層に属しているのではないかと思います。
子どもは巣立っても、子どもがつないでくれた縁は残る。グラフを眺めながら、おしゃべりをして楽しそうだったご近所さんたちのことを考え、そう思ったのでした。
「大規模集合住宅居住者のコミュニティ意識」(2013年10月発行)