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海外「食」事情レポート(4)新たな発見炎の調理の魅力

前号で、コンロやオーブンでじっくり煮込む調理が多かったイタリアでも、女性や家族のあり方が変わり、さっと焼いたり煮たりするコンロの調理が増えたことをお伝えしました。
それでは、イタリアの一般のマダムたちはどんな食生活を送っているのでしょうか。今号ではイタリア式食生活の特徴についてご紹介しましょう。

これがイタリア式食生活
●コンロとキッチン

イタリアの家庭ではコンロの口数は4口が標準で、5口、6口の家庭もあります。今回驚いたのは、訪問したすべての家庭のコンロが、口数が多いだけでなく、そのどれもがぴかぴかに磨き上げてあったこと。もちろん料理をしないからきれい、というわけではありません。仕事に家庭に忙しいイタリアマダムが、キッチンを美しく保つコツは、まめな掃除。私がヒアリングした際も、料理をしながら、あるいは話しをしながら、手はこまめにコンロや壁を拭いているマダムが多くいました。イタリアでは、コンロは使用するたびに掃除をする家庭が一般的で、コンロはもちろん、周辺の壁も毎回拭き掃除するそうです。料理が終わったあとは、シンクも毎回磨き上げ、水滴は一滴も残さないというご家庭も。日本なら天ぷらガードを置いてあるようなキッチンのコンロの向こう側の壁に、写真や絵を飾り、コンロそばの窓にはレースのカーテンをかけている家庭も多く見られました。まめな掃除は、私たちもぜひ見習いところです。

●食材
スローフード発祥の地イタリアだけあって、どこの家庭も食材にはこだわりがあります。市販の加工品には頼らず、日本でもかなり前に流行なっていた(それとも、今でも日本の多くのご家庭がなさっているのでしょうか?)自家製フリージングを週末にたくさん作り、忙しい毎日はそれを使って調理するという家庭は多くありました。また、部下を十数人持つアリタリア航空のキャリアマダムに、「どんな加工品を使っていますか」と問いかけたところ、トマトときのこの瓶詰めを見せてくれました。トマトは夏にナポリで、きのこは秋に山で、それぞれ家族みんなで収穫し、瓶詰めにしたものだそうです。イタリアでもお手製の瓶詰めを作る人は減っているそうですが、お手製の四季折々瓶詰めなら、おいしさも間違いないし、安心です。
他にも、自家製オリーブオイルを使っている家庭や、知人が作ったドライトマトを使っている家庭など、日常的な食材には深い愛着を持ち、自分または知人の手作りにこだわるのがイタリア流のようです。

●会食
今回、イタリア人のご主人と結婚した日本人のマダム数名が、口を揃えて言ったのが、イタリア人のマンマの味への強い愛着でした。週末は、ほとんどの家庭が両親や友人を交えて家で会食をしているようです。週末の会食を通して、マンマの味は結婚後も頻繁に食卓に登場するのです。特に、イタリアでは、EU加入後イタリア国内の物価が上昇し、外食の頻度は減る傾向にあり、その分、家庭での会食が増えています。キッチンを隅々まできれいにするのも、頻繁に来客があることも関係ありそうです。
イタリアの会食は、2時間位かかるのが普通ですが、実際に食べている時間は10分程度で、会話重視のコミュニケーション型です。その日の食事に関することはもちろん、友人のこと、今週会った出来事など、様々なことを話します。今回ヒアリングした、家族と同居している20代の独身女性は、
「私の親は私の交友関係も普段の生活も全部知っている。何故なら毎日の食事はもちろん週末の食事時間など、食べながらゆっくり話しているから。」
と話していました。
イタリアといえば、有名なブランドも家族経営のものが多く、家族の絆が強いイメージがありますが、それは一般の家庭でも同様です。しかも、その家族の絆は、食事時のコミュニケーションが大きく関わっていることは、今回のヒアリングでも垣間見ることが出来ましたし、また書籍などにも記されています。
それでは、家族の絆にも密接な普段の食事は、どうなっているのでしょうか。次号で詳しくご紹介します。

都市生活研究所 小西 雅子

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