近年、男性の料理人口が増えている。東京圏に住む20歳以上の男性で料理をする人は、1990年の39.4%からわずかずつ上昇し、2005年には55.5%となった【図】。当研究所の3年ごとに行なっている生活定点調査(注1)の結果であり、今回始めて半数を超えた。この傾向はどの年代にも当てはまり、いまや料理をする人は男性の主流となったのである。
しかも2001年の調査(注2)をみると、料理をしている30-50代既婚男性の9割が「楽しい」と感じている。作る頻度は週1回程度だが、得意の炒飯、ラーメン、焼きそばなどが家族に喜ばれている。男性には、「蕎麦うち」や「中華鍋を強火で煽る」というパフォーマンスに憧れる人が多く、男性の料理は「楽しみ」に括られる。女性たちも、このような料理好きの男性に対し、前向き、やさしい、頼もしいという良いイメージを持っている。
今後ますます料理をする男性の増加が予想され、その牽引役として団塊世代が期待される。定年後の男性料理はよく話題になるが、50・60代の男性に調査をすると(注3)、60代の9割以上は普段の食事作りを妻任せにしている。料理をしない男性は、「作れない」、「必要がない」、「妻の領分だから」というが、妻の7割は「夫が料理をしてくれたら嬉しい」と思っている。だが、妻の4人に3人は夫に言葉で伝えていない。
一方、かつて友だち夫婦と呼ばれた団塊世代は、定年後のことも2人でよく話し合っている場合が少なくない。この(2006年)2月、団塊世代20人にグループインタビューをしたが、女性の多くは「家事は私の仕事」で手抜きはしないが、「私の人生も楽しまなければならない」と考えていた。
地域活動や趣味、友人との付き合いなどで大変忙しく、定年後は夫にも家事を分担してもらいたいと考えている。
団塊の男性も、「料理はやればできる」と思っており、先輩世代の男性に比べて料理への抵抗感は低い。小学校家庭科でご飯の炊き方や味噌汁の作り方などを習った人も多く、包丁やコンロを一通り使えるので、料理のハードルはそう高くないだろう。なかには、休日の朝食作りや料理教室に通うなど、今から定年後の準備をしている人もみうけられる。
2007年以降、団塊世代の新規参入で、男性の料理人口の飛躍的増加が確信される。今後、男性の心を捉えるであろうキッチン設備・機器、食品、情報などの登場がとても楽しみである。男性の料理について、皆様はいかがお考えですか。
「生活観測データ集2005」東京ガス都市生活研究所
(注1)「生活観測データ集2005」(2005)東京ガス都市生活研究所
(注2)「男性の料理に関する意識と行動調査」(2001)東京ガス都市生活研究所
(注3)「50・60代の夫の料理と妻の意識」(2002)東京ガス都市生活研究所