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刺激を求める50代

 市民農園が増加している。法律の改正によるところも大きいが、耕運機市場の拡大やアグリス成城など菜園ビジネスの登場をみると、大きなニーズがあったことは否めないだろう。家庭菜園にいそしむ主役は、人口ボリュームの大きい団塊世代が含まれる50代男性。いま、なぜ、家庭菜園なのか。
 まず、50代の生活の特徴を考えてみたい。50代は、一般に子育ても仕事も終わりに近づき、精神的・経済的なゆとりが増えはじめる年代である。実際に、約8割が今後はのんびりした生活を送りたいと考えている。そういった気持ちの反面、時間が余ることに、一種の恐怖感のようなものを感じているのも、この年代の特徴である。高度成長期のなかで、常に目標を持ち頑張ってきた彼らは、インタビュー調査でも、時間が余りすぎることは決して居心地がいいといえないと話す。
 つまり、現在の男性たちの家庭菜園熱は、のんびりした生活のなかにメリハリを求める結果だといえよう。自分で手をかけて、その成長を見守る。彼らにとって、野菜や花が育っていく様子は、日々の新たな目標なのである。
 女性もまた同様の悩みを持つ。子どものためのイベントは減り、生活のメリハリは失われがちだ。もちろん、子どもを通じた仲間や趣味・地域の人々など、親しい人との交流は活発であるが、あくまでも、これまでの生活の延長上に存在するものである。それだけでは物足りない。50代を中心とした現在の韓流ブームは、女性の生活に日々の新たなときめきを与えるものだからこそ、定着しているのではないか。
 50代の生活というと、のんびりとした、どちらかというと、静的生活を思いがちだが、実際は異なる。のんびりとした生活のなかにも、ときめきやわくわく感といった刺激を求めているのである。

市民農園開設数の推移
出典:特定農地貸付法及び市民農園整備促進法による市民農園の開設数
中塚 千恵

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