2005年の食育基本法制定を機に、食育という言葉を多く耳にするようになりました。食育とひとことでいっても、食材や栄養の理解、食の作法の習得、コミュニケーションなど、範囲は多岐にわたります。今年5月に内閣府が公表した「食育に関する意識調査」によると、食育の「言葉を知っていた」人は65.2%と認知度はアップしているものの、「食育を実践している」人は55.8%と取り組みはまだ進んでいないようです。実践していない理由のひとつに「食育自体をよく知らない」も挙がっており、定着には時間が必要です。
では、身近な環境である家で、食育を行なうと、どのような効果が期待できるのでしょうか。下表は、都市生活研究所で行った食育実践者や専門家への調査に基づき、食育による効果を整理したものです。食育の行動を大きく食材選択、料理、配膳、食事、栽培の5段階に分け、それぞれの行為ごとに、知性をつかさどる左脳への刺激と感性をつかさどる右脳への刺激に分けて整理した点がポイントです。
これによると、食に関する行為がいかに多くの能力育成に貢献できるかということがお分かりになるのではないでしょうか。料理や盛りつけに参加することで右脳が刺激され、五感や美的感覚の育成にもつながりますし、加熱による調理物の変化や「4等分」といった数の定義など、科学や数学も身近に理解することができます。加えて流しに立つことで下水からつながる環境の問題にも関心を持たせるきっかけになるのです。
ここに挙げられている行為は、日常ほとんどの子どもを持つ親が行なっている行為だと思われます。しかし、このような一般的な生活行為を、子どもに言葉で解説したり質問したりしてあげることで、子どもの関心を高めることができるのに、簡単に済ませたいといった親側の食行動の意識によって、こうした子どもの関心が失われてしまっているのではないかと推測されます。今後は、こうした様々な能力育成効果を広め、さらに深めることで、家庭での食の価値がいろいろな角度で高まり、食育の実践が拡大していくのではないでしょうか。