住宅雑誌などで目にする最近のキッチン空間は、水回りのひとつというよりむしろ、リビングとの一体空間と位置づけられる傾向が高まっています。そのため、20~40代の住宅一次取得層が建築家と住宅を建てる際にも、キッチン空間のリクエストとして、こうした雑誌で見つけたあこがれのキッチンイメージを示すことが多いそうです。ただし、その大半はキッチンイメージを示すだけで、実際に何ができるとよいかまで考えている人は少ないと、建築家はいいます。そこで、生活者の潜在意識の中にある「何をしたいのか」を顕在化させ、住宅一次取得層が名実ともに求めるキッチン空間を提案してあげることが大切になります。
そこで、住宅一次取得層の食生活の実態のうち、「よく作るメニュー」から考えられる潜在ニーズをご紹介します。下図は、2007年11月に、最近1ヶ月で「よく作った」メニューをライフステージ別に示したものです。これによると、炒め物、肉系の焼き物、魚系の焼き物という順によく作られており、特に肉系の焼き物については、子どもが成長するほどよく作られていることが分かります。さらに、「自分が作りたいメニュー」、「夫や子どもがリクエストするメニュー」を聞いたところ、「自分が作りたいメニュー」で一番多く挙げられたものが炒め物で、「夫や子どもがリクエストするメニュー」で一番多く挙げられたものが肉系の焼き物でした。この結果を、一次取得層が食事作りの際に重視する4つのポイント「おいしく感じる」「手間なく作る」「食材の無駄なく作る」「栄養をとる」を考慮して分析すると、買い置きした食材を利用して手間なく栄養が取れることから「自分が作りたい」ものと、家族に喜ばれるから「リクエストに応える」ものをバランスよく作っていると考えられます。
<図>最近1ヶ月で「よく作った」メニュー (2007.11 N=1100)
また、90年からの定点観測調査でも、炒め物や焼き物は「よく作るメニュー」として常に上位を占めることから、これらの「よく作るメニュー」は油・ニオイ・煙を気にするメニューではありますが、オープンキッチンになったからといって控えられるものではなく、潜在ニーズに基づいて今後も求められるものと考えられます。そのため、こうしたメニューが、汚れへの気兼ねがなく思う存分料理できるキッチン空間というのが、名実ともに求められるキッチン空間であると言えるのではないでしょうか。
名実ともに求められるキッチン空間の提案に向けて、次回は「休日の時間短縮手段」の結果をご紹介します。