都市研コラムその1(2008年1月7日)・その2(2008年6月30日)でもご紹介したように、都市生活研究所で2007年に実施した「寝室に関する調査」によると、年齢が上がるにつれて「夫婦は別の寝室で寝ている」人が多くなり、50代で約32%、70代以上では約半数になっています。都市研コラムでは、その1で夫婦別室就寝の理由について、その2でその良さについて書いてきました。今回は別室就寝者の寝室とはどのような部屋か、さらに理想としてどのような部屋が望まれているかをご紹介したいと思います。
夫婦別寝室の実態と理想 ~男女で異なる理想の寝室~
まず、夫の部屋と妻の部屋の位置関係ですが、「直接つながってはいないが、気配や物音を感じられる距離」にある人が46%と最も多く、理想の位置関係を尋ねてもそのような距離が望まれています。男女別に見ると、男性の方がやや近い距離を望む人が多くなっています。
部屋の広さは6畳以上8畳未満が55%と最も多く、夫婦同室就寝者と比べると狭い傾向にあります。理想を聞いても「8畳くらい」が最も置く、10畳以上を希望する同室就寝の人と比べて狭くなっています。一人なので、さほど広い空間は必要とされていないようです。
和室か洋室かを聞いてみると、実態ではあまり男女差がなく、約4割が和室です。ところが理想は男女で異なり、女性では和室は2割弱、フローリングの洋室が半数以上なのに対し、男性では和室とフローリングは4割弱で同程度になっています。ベッドか布団かを尋ねても同様の傾向があり、現状では男女とも6割程度が布団であるのに対し、理想では男性は過半数が布団、女性は約8割がベッドと大きな違いが現れています。
つまり、夫婦別室就寝者の理想としては、広さは「8畳くらい」、男性は「和室に布団」女性は「フローリングにベッド」で、それぞれの寝室が「気配や物音を感じられる距離」にあるという寝室が望まれていることがわかりました。
寝室の空調の実態と理想 ~女性はより質の高い居室環境を望んでいる~
また、寝室の空調ですが、夏冬ともにエアコンが多く(夏76%、冬59%)、夏は扇風機(43%)冬はファンヒーター(21%)がこれに次ぎます。理想として「空調に望むこと」を尋ねたところ、夏の空調に関しては、多くの項目で女性の希望が高くなっています。(図1)
冬の空調に関しては、夏ほど男女差はありませんでしたが、音の静かさや操作・手入れの簡単など通年で望まれる項目に関して、女性の方が希望が高いことがわかります。(図2)
空調への希望で男性が女性を上回るのは、「すぐ冷える・暖まる」「部屋全体が涼しい・暖かい」の各項目であり、冷房は冷えること、暖房は暖かいことという明確な効果を期待していることがわかります。一方女性の理想は「冷えすぎない」「足元が暖かい」「音が静か」「空気清浄機能」など、温度はもちろん、その居室環境の質がより高いことを期待しているように思われます。
今回見てきたような寝室スタイルの希望の違いや、居室環境への理想の違いが夫婦別室就寝の理由のひとつとしてあるのかもしれません。
住宅の中では、リビングやキッチンほどにはこだわりをもつ人が多くはない寝室ですが、年々日本人の睡眠時間は減少し、その質の重要性が認識されてきている今日、空調を含めて寝室にももっと関心を持ってもよいのではないでしょうか。
夫婦別室就寝の方々は、睡眠環境を自分にとってより良いものに整えるという意味で、一歩先に進んでいるのかもしれません。