敬老の日が近づくと、ひとり暮らしの高齢男性の食事情に思いを馳せる方も多かろう。かくゆう私もそのひとりだ。平成17年度の国勢調査によると、一都三県の高齢者世帯の約9%が男性のひとり暮らしということで、決して多くはないものの、料理経験の乏しい世代ゆえ、心配になる存在である。
そこで今回は、65歳以上の高齢者を対象に行ったアンケート調査の中から、ひとり暮らし高齢男性の台所事情の一部を紹介する。調査は昨年10月に訪問面接方式で行った。
ひとり暮らし高齢男性100名のうち76%がほぼ毎日夕食を作り、同様に朝食では83%がほぼ毎日作っており、自炊の習慣が定着している様子が伺える。では、何を作っているのかというと、基本のご飯と味噌汁に加え、焼き魚や炒め物といった、手早くできる料理が定番となっている。高齢女性の定番である煮物や常備菜は、ひとり暮らしの男性にはそれほど作られていないが、惣菜など中食の利用頻度が比較的高いことから(約4割が週に1回以上中食を利用している)、購入に頼っているのかもしれない。また、ご飯、味噌汁、焼き魚は「年をとってもこれだけは自分で作りたいもの」の上位にも挙がった(図)。簡単であることに加え、出来立ての美味しさがそう思わせるのではないか。
図 高齢者の食生活調査(2008年10月実施)による
インタビュー調査でも、「ご飯と味噌汁は元気の源なので食べないと駄目」と話す男性がいた。ひとり暮らしだからこそ、自ら健康に気を使い、規則正しい生活を実践しているのである。ご飯と味噌汁、そして惣菜では味気ない焼き魚が作れることは、ひとり暮らしの高齢男性の生活の中で、重要な要素のひとつといえよう。さらに、「今はよくても糖尿病などでカロリー制限が必要になった場合に何をどう作ればよいのかわからない」という不安も聞かれた。
子どもに向けた食育はよく言われているが、今後は高齢者の増加に伴い、ひとりになっても健康で長生きできる、高齢男性のための食育が求められるのではないだろうか。