少子化対策としての「子ども手当て」政策についての話題が、昨年から長期に渡って報道され続けています。それだけ多くの人々が注目しているとともに、その成果に期待が寄せられているといえるでしょう。
「子どもを社会で育てる」とはいえ、子どもを持つかどうかの選択は、個人(夫婦)の考えによって決まる部分が大きくなっています。都市生活研究所の調査でも、「結婚しても必ずしも子どもを持たなくてもよい」と考える人が全体で約42.9%、40代女性では57.1%にのぼっています。(あてはまる+ややあてはまる)
40代女性は20代女性よりも13ポイントほど肯定意見が多くなっていますが、40代は中高生~大学生の子どもを持つ人が多く、反抗期や受験期であることや経済的負担のため、子育てに辛さを感じてこのような結果になっているのかもしれません。
しかし、若年女性の肯定意見が低めになっている理由はそれだけではなく、20代を中心に子育てが再評価される傾向があることが、別の調査にも表れてきています。
都市生活研究所で行った、くらしに関する調査の中で、「子育ては義務感よりも楽しさが大きいと思う」人の割合が20代で高いことがわかりました。20代既婚者は男女とも肯定意見が半数を超えて最も多く、未婚者でも男女とも23%以上と他年代未婚者よりも多くなっています。また、「子どもがいることは一種のステイタスである」と考える人も他年代より多く、既婚者で約4割、未婚者で約2割となっています。
このように、20代においては男性や未婚者の肯定意見も多めであることから、年代共通の傾向として、子育てや子どもを持つことに対して興味や良いイメージを抱いているのではないかと思われます。
つまり、20代には男女ともに「子どものいる生活は楽しく、誇れるものだ」と考える人が他年代よりも多く存在するということです。若いファミリー向けの雑誌やブログなどの媒体を通じて、お洒落な親子ファッションや可愛い幼稚園弁当が紹介されたり、20代の芸能人が子育てを前面に出して活動していたりと、「楽しい子育て」のイメージが数多く発信されていることも影響しているのかもしれません。
この結果だけを見ると今後「子どもを持つ」という選択をする人が増えるのではないかという期待もできます。子ども手当て効果も合わせ、楽観的な予測もできないことはありません。
しかし、実際には経済面だけではなく、働き方や保育、住宅、教育から就職まで、解決すべき多くの問題があり、それらがハードルとなって「持ちたくてもあきらめる」人も決して少なくないのが現状です。そもそも多様な生き方を認める社会に変化したことによって、生きやすくなった人も多いという面があるのは事実なので、一朝一夕に少子化に歯止めがかかるとは思えません。
とはいえ、若い年代の人々に子育てを肯定する傾向が現れてきていることは、意味のないことではないと思います。どのような事象に対しても、義務感だけで取り組むよりは、前向きな気持ちで楽しく取り組む方が本人に有益であるとともに、結果も良いものになることはよく言われることです。子育てにおいての「結果」を、子どもの成績や生涯賃金に置き換えるのではなく、その子どもが親から何を受け取り次の世代にどのように伝えていけるか、であると考えたとき、このような傾向が今後も広がってくれることを願う人は多いのではないでしょうか。