都市生活研究所では、3年ごとに生活定点調査というものを実施しています。1990年から継続して行われていて、1回ごとの変化は小さくても、長い期間で見ると大きな変化を捉えることができます。前回は2008年に実施したのですが、その結果を元にまとめた「生活トレンド予測レポート ハピシェア」を今更ですが少々ご紹介しましょう。
現代は「個人化が進行している」とずっと言われてきました。家族人数は減り、核家族化が進み、地域においても自治会などのつながりが希薄化し、古くからある「血縁」「地縁」という言葉で表されてきたようなつながり方は避けられる傾向がずっと続いていました。だから、現代社会は人と人とのつながりが薄れてきているのではないか、と。
ところが3年前の調査で出てきたのは、それとはちょっと違った傾向でした。確かに、子供も大人も仕事や家事や勉強や塾で忙しく、直接顔を合わせるようなコミュニケーションは多いとは言い難いですが、代わりに携帯電話やメールで頻繁に連絡を取り合い、誕生日やクリスマスといったイベントを家族で一緒に祝うことは増加傾向にありました。
友人とは「つかず離れず」のほどよい距離感を保ちつつも、メールや携帯などで頻繁に交流し、SNSも拡がりつつありました。
その「家族とのつながり方」ですが、「理想の家族の関係と実現できていること」のグラフを見ると、「楽しいことを一緒に行なう」は理想も実現度も高い結果でしたが、「苦しい時こそ一緒に助け合える」「何事も本気で話し合える」は理想と現実の差異が大きく出てきました。家族とは仲良く楽しいことを一緒にするけれど、いつもなんでも一緒というわけではなく、普段はお互いに干渉しすぎずに一定の距離を置く、というのが現実的な幸せの形だという結果だったのです。
そして、つながり方は「家族・友人」だけでなく、「他人」や「社会」についても、同様に変化していました。キーワードとして導き出したのは「楽」「得」「役」。
「つながり」は薄れたのではなく、「つながり方」が変化したのです。
その傾向は予測どおり世の中に拡大する方向で進んでいました。
そして、今回の大震災・・・・・。
震災後に、新聞や雑誌・メディアでは「つながり」という単語が増えているようです。
しかし、それは以前都市研が予測した「つながり」のニュアンスとは若干違っているように感じます。
今年行なう調査では、人々の意識はどのように変わっているでしょうか。それとも変わっていないのでしょうか。