室内温湿度は換気・空調の使用、外気気候、生活発熱・発湿で変わる
近年、省エネへの要請から、高気密高断熱仕様の住宅が増加してきている。確かに、同じ設定温度を保つための暖冷房エネルギーは削減され、部屋壁の表面温度と室内の空気温度の差が縮まり不均一性の削減に伴う温熱的な快適性の向上が期待される。しかし、これは室内空気温度の側面からの効用であり、日本の住宅内湿気環境を考えると気密化により発生または流入された湿度が室内にこもりやすくなる懸念がある。また、実際には室内空気温湿度は生活者の換気・空調の使用、外気気候、生活発熱・発湿等によって大きく影響を受けるはずである。
日本の夏期においては部屋ごとの温度は大差なく、湿度にやや差
そこで、夏期における東京近郊の実住宅を対象にし、まずは実際の室内空気温湿度環境および空調機の使用状況を実測調査(※)した。表1は実測された部屋ごとの平均空気温度と相対湿度を示している。戸建・集合住宅共に実測期間中の平均室内温度は約28℃であり、平均相対湿度はそれぞれ 66%、67%とほぼ同じであった。しかしながら、相対湿度の部屋ごとにはややバラつきがあり、脱衣室において何れの住宅においても70%とやや高く、個室では集合住宅の方が4%高いことが分かった。気密化による湿気のこもり、生活による湿気発生の位置や間取りの違いなどがその理由として挙げられる。
パッシブな湿度設計が求められる
では、室内温湿度に影響を与える要素の1つである空調機の使用時間率について調べてみよう。図1は集合住宅であるA邸の実測期間中の1週間の温湿度変化および空調機の稼動状況について示している。室内温度は実は余り変動がなくほぼ一定。一方、空調機(エアコンまたは除湿機)の使用時間率は低く、稼動している間は湿度は大きく減少しているが、止めると窓を開放する行為をするためか、外気の湿度状況に引きずられる様に直ぐに70%に戻ってしまう。こうしたことから、湿度をある一定以下に保つには、オフィス空調の様に空調機を常時稼動させることが必須であると予測されるが、常時空調ではエネルギー消費がただ多くなるだけである。こうしたことから日本の生活・気候を考えれば、画一された住宅・設備だけでは温湿度への対応が困難であり、パッシブな湿気設計が求められるのではないだろうか。
※実測調査:戸建19件、集合11件(築5年~20年)で連続約7週間実測(7月中旬から10月中旬)。計画換気システムの導入は何れも無し。室内温湿度は温湿度センサーにより計測し、直射日光や空調機からの気流が直接当たらない壁面に設置。