人が温度を「感じる」メカニズムとはどうなっているのでしょうか。
人の皮膚は極めて敏感な温度感知センサーを持っています。冷たいと感じる温度では「冷点」が刺激され、暖かいと感じる温度では「温点」が刺激されます。ところが、熱いと感じる温度では温点だけではなく、冷点も刺激されています。熱い風呂に入ったとき一瞬鳥肌が立って、なぜか「冷たい!」と感じた経験はありませんか。また、非常に低い温度や高い温度では「痛点」も刺激され、ドライアイスに触ったときに「痛い」と感じるのはそのためです。
「冷点」や「温点」といった人の温度センサーは、皮膚の表皮(厚さ0.1~0.2mm)の下にある「真皮(厚さ1~2mm)」の中に存在します。冷点は1cm2あたり6~23個、痛点は100~200個もありますが、温点はわずかに1~3個しかありません。人が環境から身を守り体温を37℃程度に保つために、「痛い」とか「冷たい」といった感覚を優先的かつ敏感に感じ取るために備わったものとも考えられます。
よく、「赤外線暖房は日だまりの暖かさ」と言われていますが、暖房器から放射される赤外線は大きく2つに分けられます。電気ヒータなど表面温度が数百℃ の暖房器は、波長の短い(2~3μm:ミクロン)の「近赤外線」を放射します。一方で床表面温度が30℃程度の床暖房などは、波長の長い(8~9μm)「遠赤外線」を放射します。地表に豊かにふり注ぐ太陽光の波長を調べると8~14μmの「遠赤外線」領域を多く含んでいることがわかっているので、「床暖房は日だまりの暖かさ」ということが言えるわけです。
さて、話をもどして、皮膚の温度センサーはこの赤外線をどのように感知しているのでしょうか。さきほどの「冷点」や「痛点」は真皮の浅い場所に存在し、一方「温点」はそれより深い場所に存在します。遠赤外線は皮膚表面で反射されにくく、また皮膚中の水分に吸収されることなく、直接温点に作用するので穏やかな「暖かさ」を感じることが出来るのです。一方で近赤外線は皮膚表面での反射されやすいため、比較的浅い場所にある冷点、痛点のみを刺激し、「灼熱感」を感じるのです。