都市生活者への意識調査をしていると、仕事や育児、介護、子供の塾などに追われ、「生活にゆとりがない」とか「もっと人間らしい生活をしたい」というような声が目立ちます。
特に30代以下では、4人に1人が「常にゆとりがない」というデータもあり、生活への不満が最も多い層だと考えられます。
そこで、現代の都市生活者が考える「人間らしい生活」とは、どんなことを指すのか、今年6月に1都3県に住む25歳以上の男女900名に行ったインターネット調査より、ご紹介します。(図1)
■「人間らしい生活」は必要最低限より上の生活
都市生活者が考える「人間らしい生活」の上位2つは「安心でおいしい食事や十分な睡眠といった、生命の源を充実させる生活」、「季節の変化や自然を身近に感じられる生活」でした。つまり、人間の基本的生活である「必要最低限の衣食住が実現された生活」よりも質の高い生活と見ているのです。日常の食事や睡眠の充実や、四季のある日本が伝統的に重視してきた自然との協調が、人間らしさを表す生活と考えられていることが分かります。
■「ラク」「手間」は人間らしい生活とは思わない
一方、「機械やサービスをできるだけ使ってラクを実現する生活」や、その対極にあるスローライフなどで象徴される「手間ひまかけた丁寧な生活」にはほとんど挙がりませんでした。このようなラクや手間は、時には必要であるものの、あくまで何かの目的のための手段であって、「人間らしい」とは思わないようです。
■「コントロールされない能動的意思」や「家族のコミュニケーション」も
また、40~50代の子育て期では、「子どもや家族と一緒に様々な感情を感じ、語り合える生活」や「人やシステムに左右されることなく、自分の意思で行動ができている生活」に人間らしさを感じる傾向が見られました。これは、子供を育てる上で必要な人間性の構築に必要と考えるからでしょう。最も生活にゆとりがないために最低限の生活を人間らしい生活と考える意識が高い30代以下の若い世代にとっても、今後家庭を形成していく過程では大切にされると考えられます。
そして、こうしたより「人間らしい生活」を求める人は約8割にものぼりました。(図2)
インターネット調査であることから、インターネットを使用しない層の意識が抜けている点に注意が必要ですが、少なくとも今回の調査から、どんなに便利になっても変わらないはずの人間本来の力や心が失われつつあると感じる意識が、人間らしい生活の志向へと働いているのではないかと思われます。今後、ますます人間らしい生活が見直されていくことでしょう。