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健康意識と行動

 健康への関心が高まっている。健康に関する記事を読むことはここ15年で22.7ポイント増えた。これは若い年代でも同様である。サプリメントや健康食品、スポーツクラブなど、「健康によい」といわれるものは、私たちのまわりに無数に存在する。今後、さらに高齢社会が進展していくことを考えると、健康関連商品やサービスはますます増えていくことが予測される。

 しかし、生活者は健康に関する情報を目にしても、実際の行動となると、それほど増えていない。例えば、身近な健康行動とみえる日常の食事でバランスのとれた栄養をとることを心がけること(約12年間で12ポイント減)や、無添加や低農薬の食品を選ぶこと(約15年間で9ポイント減)は減っている。

 その一方で、サプリメントで栄養を取ることに抵抗がある人は、6年間で17ポイント減った。つまり、健康に関する情報を得ても、栄養バランス等の手間のかかる行動ではなく、サプリメントといった利便性の高い栄養摂取方法を選択していることがわかる。生活者はより利便性の高い方法を選んでいるといえよう。この傾向は、売っている惣菜の利用増など、調理の簡便化からも裏付けることできる。

 こうした傾向をみていると、生活者は様々な場面で簡単・便利な生活を享受し、強く求めているようにみえる。しかし、生活者の立場にたってみると、そうだろうか。生活者は、手を抜くことを求めているのではなく、単に「無理をしていない」だけなのかもしれない。無理をしていない自分をポジティブにとらえている可能性がある。そうだとすると、簡単・便利な生活を、手間を省いた「無機質な生活」「味気ない生活」と批判するだけでは、その批判が理解されることはあっても、共感されることはないだろう。

 生活者の立場にたって、ある行動に生活者が受け容れやすい意義を持たせることこそ、行動として定着させる鍵になるのではないか。

「健康に関する記事を読むこと」調査結果表

都市生活研究所 中塚 千恵

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