小春日和の一日、都会の喧噪を忘れてどこかの里山をのんびり散策してみるのもいいですね。
やわらかな木漏れ日の中をゆっくりと、湿った落ち葉を踏みながら歩く小道の感触、歩いて少し汗ばんだ肌を冷やしてくれる心地よいそよ風、冬枯れの葉をゆらす音、木々の匂い、町中とは違う空気の透明感。そろそろ景色のいいところでお茶でも点てながら一休みしようか・・・。
このように自然とふれあうとき、五感すべてで気持ちよさを感じ取っているように思えます。
人は様々な物理環境と心理的状況が組み合わさって、その場を快適と感じたり、不快と感じたりしているそうです。さらに快適性を研究する上で複雑にしているのが、経験してきた過去の環境に対する人の「順応」とそれに対する「期待値」のようです。寒い冬日がつづいたあとの小春日和をとても暖かく感じたり、夏の炎天下を歩いて来た後に空調の効いたオフィスに入ったときには非常に涼しく感じたります。どっちも人は快適と感じますが、温度環境は異なります。住宅の暖房においても同じことがいえるのではないでしょうか。同じ温度に設定しているのに、日によって寒く感じたり暖かく感じたりすることがあります。おそらく着衣状態や身体のコンディション、活動量など、さまざまな状態量が変化するので感じ方も変わっているのでしょう。さらに建物も昼間の日射で蓄熱量が変化し、風が吹いていれば換気量が変化します。このように気候や建物の状況、人の状態量、そして順応と期待値をうまく取り入れて巧みに空気環境をコントロールできれば常に快適な空調を実現できるような気がします。取り入れる情報が非常に多く、技術的に難しいことかとは思いますが、そんなことができれば必要以上に暖かくしたり、涼しくしたりすることが無くなるので省エネにもつながるのではないでしょうか。
都市生活研究所 鍵屋 慎一