1年で一番寒い季節になりました。朝、布団から出るのが辛いのはいつものことですが、それでもタイマーをセットし忘れて部屋が暖まっていない時よりは、暖まっているときの方がスムーズに出られる気がします。そんなわけで、我が家では起きる前にリビングルームを暖めておくことは必須です。その一方で、誰もいない部屋を暖めておくのはもったいない、という人もいます。地球環境のことを考えると、後者の意識を持つべきと理性では分かっていても、朝の行動をスムーズに進めたいという気持ちが勝るわけで、快適さと省エネの両立は課題です。そこで一体、両立する人がどれくらいいるのだろうかと、年末に行ったエネルギー利用実態の訪問調査を通して、徒然なるままに考えてみました。
一般的に、生活者の省エネ行動は光熱費の削減意識と直結することが多いため、「暖房空間の快適さと省エネ」の関係を「暖房利用と光熱費意識」の関係で捉え、タイプ分けをしてみました。暖房が必要な世帯が暖房にかける光熱費の考え方として、「全く気にせず使うタイプ」、「気にして暖房を我慢するタイプ」、そしてその中間の「気にして賢く使うタイプ」の大きく3つに分けられました。
「全く気にせず使うタイプ」は定年後の比較的お金に余裕のあるシニアカップルや共働き層に見られ、いくら払っているのか分からないが質の高い暖房は健康維持や快適生活のための必要経費だと考える層です。この層にとっては、光熱費削減よりも利用に価値が置かれるため、省エネとの両立は、使用機器の省エネ性能によります。
そして2つ目は、専業主婦のヤングカップルや、末子が高校生以上のアダルトファミリーなどに多く見られる「気にして暖房を我慢するタイプ」。乳幼児や高齢者がいないためにある程度我慢しやすく、また家族が複数人揃う時間が短いこともあり、暖房を控えてかなり着込んでいます。中には、スキー場にいるような格好をしているという人もいました。この層は光熱費の削減意識が働くので、結果的に省エネ行動をしやすい層だと考えられますが、快適との両立ができているとは思えません。
そして3つ目の「気にして賢く使うタイプ」は、快適さと省コストの両立を目指す人たちで、光熱費を最大限に削減しながら快適に使うことを正当化できる人達です。例えば、床暖房は下からじんわり自然な温かさで健康によい、お年寄りや子供の留守番時でも安心など、利用価値を評価する一方で、光熱費は気になるから、タイマーを使って早めに切る、無駄に暖めないよう吹き抜け部分にカーテンをかける、むやみにオンオフをしないなど、意味づけしながら使っています。また、暖房を快適に使う代わりにお風呂はスポーツクラブで済ませたり、1回の赤ちょうちんをやめて家の快適を確保したりと、暖房そのものの使い方だけでなく家計の配分を工夫する場合もあります。このタイプは、ある意味快適さを追求しつつも結果的に暖房でなしうる限りの省エネを既に行なっている層とも考えられます。
これら3タイプの中では、1番目のうち省エネ効果の高い機器を利用するタイプと3番目のタイプが、暖房空間の快適さと省エネの両立をしている人たちではないかと考えられますが、実はこれらの人達の中には、冒頭の「人のいないところの暖房」をよしとする人も悪しとする人もいるのです。
回りくどくなりましたが、結局、快適な居場所づくりの考え方は人それぞれ違います。また、過去の寒さ経験や習慣、体感、住宅性能、日当たり、利用時間がそれぞれ異なるため、快適と省エネを両立するライフスタイルの特徴を挙げることがいかに難しいか分かります。「人のいないところの暖房」は、部分で考えると地球環境に悪いように見えても、全体の利用時間の削減や器具の性能、その他の行動で補完している場合もあり、一概に改めるべき意識だと捉えてはいけないと思うのです。今後より一層省エネ行動が推進される中で、一部の考え方に左右されず、生活トータルで考えられる賢い生活者が増えていくことを、切に願います。