100年に1度の大不況といわれる昨今、巣ごもり消費が増えており、お酒を飲むのも居酒屋ではなく「家飲み」している人も多い。最近は、CMの影響もあり、単なる「家飲み」ではなく、「ウェブ飲み会」も行なわれている。パソコンの前にお酒とおつまみを持ってきて、ネット上で会話を交わしながら飲むバーチャルな飲み会で、費用を抑えるだけではなく、いつでも、何をしながらでも参加でき、時間や手間がかからないのが特徴である。
時間や手間を省く傾向は健康や美容の分野でも現れている。「寝ながらエステ」というコンセプトの「ナイトスチーマー」のヒットは、その代表例といえよう。
都市生活研究所が2009年10月に行なった調査(20~60代の男女1000名対象)によると、「時間や手間をかけずに健康や美容の効果を得ること」について、共感する人は7割いる(図1参照)が、実行している人は2割にも満たない(図2参照)。
時間や手間をかけずに効果を得るための商品の1つとして特定保健用食品(トクホ)がある(図3参照)が、同調査によると、その満足度は5割程度にとどまっており(図4参照)、他の商品に比べても低くなっている。本調査が「エコナ」問題があった時期であることも考えられるが、そもそも、利用理由である期待した効果が感じられなかったことも一因であろう。
最近は、食べると脂肪燃焼効果のある「メタボ予防マグロ」なども研究されているが、健康や美容の分野では、時間や手間を省くだけではなく、その効果をいかに実感できるか、という観点をなおざりにしては、生活者には受け入れられないのではないだろうか。
高安 光治