猛暑も9月下旬から落ち着き、秋らしくなってきましたが、この夏の暑さは例年になく、非常に厳しいものだったのではないでしょうか。環境政策に加え、異常気象ともいえるこのような気候が影響しており、社会全体として環境配慮の機運は高まっているともいわれています。
しかし、東京ガス都市生活研究所の調査によると、生活者の環境に関する取り組みに対して低下傾向がみられました。
環境配慮に対する意識をみても、環境への関心は低下傾向がみられるようです。
2006年と比較して自分が取組むべき環境問題として、全体として低下傾向にありますが、最も低下率が大きいものは「CO2排出量の増加」に対しての取り組みとなっており(2006年68.9%→2010年56.3% ▲12.6ポイント)、世の中の温暖化対策の動きに反して、生活者の意識が伴っていないのが現状のようです。
これまでの調査の分析から、生活者にとっては「環境配慮といえばCO2削減」というように、『CO2削減』がわかりやすいキーワードとなっていますが、一方で効果やメリットは非常にわかりづらいことが、取組むべき環境問題として意識が低下している原因と推測されます。最近では、効果が実感できないため、環境配慮の取組みが嫌になるといった「エコ疲れ」という言葉も出てきており、取り組みの定着のためには、いかに効果や自分にとってのメリットをいかに感じてもらうかが重要となるのではないでしょうか。
その方法のひとつとして「エネルギーの見える化」がというものがあり、様々な企業により、見える化のための端末やシステム等の研究開発を行われています。「エネルギーの見える化」として、多くが住まいで使用しているエネルギー使用量やCO2排出量などを表示するものになっているようですが、「エネルギー使用量やCO2排出量がわかれば使いすぎを気を付けるだろう」といった企業側の思い込みもあるのではないかと懸念されます。
以前のコラムでもご紹介しましたが(「環境問題に対する取組みをより普及させるために(3)」2008年12月15日)、生活者への調査では、環境の効果を実感できるものという質問であっても、トップに挙げられたのは、エネルギー量やCO2量ではなく、光熱費(約72%)であり、自分にとってのわかりやすいメリットがないと省エネ行動を促進することは難しいでしょう。
現状では、低下傾向がみられるとはいえ、約6割がCO2削減を自らが取組む問題として考えていますが、取り組みの目的やメリットが見えないままであると、「エコ疲れ」ではなく、環境配慮から気持ちが離れる「エコ離れ」となってしまう可能性もあります。「環境配慮のためにはこうすべき」「こうすれば取り組むはず」といった思い込みではなく、生活者視点での発想が取り組みの定着の鍵となるのではないでしょうか。