省力・省手間・省時間は生活者の強いニーズである。これまでは、人が行なうことを、機械やサービスが代替することが主たる手段であったが、その状況はさらに深化している。
自らが関わらなくても家中を掃除するルンバや、寝ている間にエステができるナノイーなど、単に省力・省手間を実現するだけでなく、時間を無駄にしない機器が売れている。最近では、エステに代表される健康・美容に関する機器のなかで、携帯用の美顔ミストの売れ行きが向上だという。「テレビをみながら」「寝ながら」など、複数のことを一度に行える様々な機器が提供されてきたが、家であっても、外出先であっても、自分の都合のよいときに、いつでも使えることが、より求められるようになったことがわかる。ここでも時間の無駄を省くことの望む生活者のニーズが存在する。
加えて、生活者は考える手間を省くようになった。インターネットの普及がその傾向を加速化させたのはいうまでもない。最近増えたニュースを解説する番組は、新聞や本を読み、情報を知識化する行為を簡略化してしまうものだ。テレビを見るだけで知識が増えることは便利であり、世の中がわかっているという安心感を得られるものだろう。その一方で、デメリットも存在する。新聞や本を読むことで得られる周辺情報からの新たな視点や考え方は、身につきづらい。
超高齢社会の到来や、幼い頃から便利な生活を享受してきた生活者が増えることを考えると、面倒と思うことや苦しいと思うことの範囲は、これからも拡大していくと予測される。そのため、省力・省手間・省時間を求める生活者はますます増え、たとえば、何もいわずとも、求めずとも、自分の思いどおりに動いてくれる機器やサービスなど、さらに多くのことを追求するだろう。プロセスを重視し、楽しむ生活は、「目的」や「主義」を持ち合わせる人にのみ受け容れられる可能性もでてきた。
今後、生活者は余った時間を何に活用するのだろうか。2002年に行った時間に関する調査において、自由時間の使い方として、最も多くあげられたのは、テレビを見ることであった。インターネットのさらなる発展、若者のテレビ離れなどが拡大するなかで、自由時間の活用方法はどのように変化するのか、再度見直す必要があるだろう。