7月も後半に入り、いよいよ夏本番がやってきました。前回に引き続き、もう少し「省エネ」について考えてみたいと思います。
7月1日から第一次オイルショック以来37年ぶりとなる「電力使用制限令」が発動されました。対象は契約電力500kw以上の大口需要家ですが、家庭部門に対しても努力目標として15%の節電が求められています。電力需要の約3割を占める家庭部門での省エネは自発的な行動ですが、この暑く厳しい夏を乗り切るためには大きな意味を持つと思われます。そうした家庭での節電・省エネが叫ばれる中、市場には様々な対策グッズが登場する一方で、経済産業省は「家庭の節電宣言」ウェブサイトを立ち上げ、東京都は節電アドバイザー事業を推進し、家庭での節電をサポートするなど、まさに官民あげての活動が展開されています。
都市生活研究所では、3年ごとに生活定点調査を実施していますが、その中で生活者の省エネ意識や省エネ行動の経年変化を見てみると、2005年に大きな伸びをみせ、続く2008年はその伸びが鈍化している状況になっています。
2005年といえば、2月に京都議定書が発効し、3月からは「自然の叡智」をテーマとした愛知万博が開催され、日本中が地球温暖化問題など環境配慮を意識した年です。2005年は地球環境への配慮というポジティブな理由による省エネ行動でしたが、前回のコラムにもあるとおり、その効果が分かりにくいなどの理由から、なかなか更なる意識・行動の向上につながってきていないのが実状のようです。
一方、今年は震災に伴うネガティブな理由による省エネ行動ではあるものの、その目的や目標は非常に分かりやすいものです。恐らく、今年度実施する生活定点調査では、省エネに関する意識・行動に大きな変化がみられると予測していますが、変わりやすい生活者の意識・行動をいかに継続的・習慣的なものにするかが、今後の節電・省エネ、さらには地球温暖化対策にとって非常に重要なテーマになると思います。
昨今の「電力不足⇒節電」という状況は、生活者にとって意識変化や行動を起こしやすいものですが、このままでは、暑い夏が終わり秋になれば、また元の意識・行動に戻ってしまうかもしれません。この夏にそれぞれが実践した「節電・省エネの具体的効果」と「光熱費の削減などによる経済的メリット」を実感することで、「節電・省エネ行動⇒自分にとっても社会にとってもメリットがある」ことを意識化し、継続的な行動に結びついていくのではないでしょうか。
そして、その意識化を促進するための方法のひとつとして「エネルギーの見える化」があります。これまでも様々な企業が取り組んできていますが、環境問題への意識の低迷などもあり、エネルギー使用量やCO2排出量などの可視化が、肝心の環境行動に結びつきにくい状況でした。 しかし、生活者の節電・省エネ意識が高まり、その意識をいかに継続させるかを議論する上において、生活者の視点で、その効果・メリットを分かりやすく可視化する「見える化」への期待はこれまで以上に大きくなるのではないでしょうか。