前回のコラム(住まいのリフォームで変わる暮らし、変わらない暮らし~都市生活レポート「キッチンリフォームの現状とニーズ」より その1~)では、都市生活研究所で行ったキッチンリフォームに関する研究結果から、リフォームに至るきっかけや、リフォームに踏み切れない理由などについてデータを紹介しました。
今回も引き続き、キッチンリフォームに関する意識・実態をご紹介したいと思います。
リフォーム前のキッチンの不満 ~トップは「収納」~
調査対象者のうち、リフォーム実施者にはリフォーム実施前の、リフォーム意向者には現在の「キッチンの不満」を聞いたところ、図1のように「収納」に関する不満が上位にあがりました。絶対的な量と、日々使う際の取り出しやすさ、この二点に対しての不満が大きく、これらを解決する「収納」が求められていることがわかります。
キッチンの収納物の実態 ~50代・60代のキッチンは、『もの』が多い~
不満の大きいキッチン収納ですが、実際にどのようなものが収納されているのか、調理器具と食材ストックについて所有率を聞いた結果が図2と図3です。どちらも全体に、年齢が高いほど多くのものを所有していることがわかります。特に50代・60代が30代・40代よりも多く所有しているものとして、調理器具では「すり鉢」「寿司桶」「すき焼き鍋」などがあります。食材ストックでは、60代に「手作りの果実酒や梅干し」が多い点が特徴的です。
キッチンリフォームによる収納量の変化と満足度 ~『もの』が減ることも満足につながる~
調理器具や食材ストックの所有率が高い50代・60代ですが、リフォーム前後の収納物量の変化を見ると、リフォームによって収納している『もの』の量が減少した人がいることがわかります。(図4)
収納量が変化した人にその理由を聞いたところ、特に60代で「使わないものを処分した」という回答が多くあがりました。さらに、この変化による気持ちとして「量が減って満足」と答えた人が、50代・60代では3割を超えています。
キッチンリフォームによる収納の改善のために ~必要性と使用頻度を見極めた「収納」が満足度を高める~
キッチンの収納には、「絶対的な量と日々使う際の取り出しやすさ」が求められていることを冒頭で述べましたが、何もかもを収納することだけが満足につながるわけではない、ということが上記の結果からわかります。50代・60代の住まいは築年数も長く、使わないけれど捨てられないものが長年そのままになっている、という家庭も少なくありません。
それらを一度すべて取り出し、本当に必要なものを見極めて、使う頻度に応じた収納計画を立てることができれば、「必要十分な収納量と日々使うものが取り出しやすい」キッチンを実現することができます。
実際のリフォームの場面では、計画が終わり工事に着手する時点で、収納物を出して整理するケースが多いと思われますが、計画段階から『もの』を見極めた収納を考えることができれば、より高い満足を得られるのではないでしょうか。