本当に一年は早いもので、2014年をしめくくる時期となりました。今年最後の都市研コラムをお送りしたいと思います。
本格的な年末に差し掛かる直前、世間はクリスマス一色に染まるなか、実は私はクリスマスというよりも「親の仕事のお手伝い」に向けて心の準備を始めます。実家で両親が乾物屋を営んでおり、物心ついたときから、学校の冬休みが始まるとすぐに両親の元で大晦日まで手伝うことが毎年の習慣でした。おせち食材で店頭がびっしり埋まる年末は、乾物屋にとって一年の中で最大の書き入れ時です。
毎年、おせち食材の売れ行きで両親の一喜一憂する姿を見ながら、私も同じように敏感に意識するようになりました。だから、年々乾物の売り上げが下がり、「おせち料理を自分で作る」人が減っていることは身に染みて感じているところです。
東京ガス都市生活研究所で今年5月に和食に関する調査を実施しました(都市生活レポート「年代によって異なる和食に関する実態と意識」2014年11月公開)が、そのなかに「『おせち料理』をどのように用意することが多いか」と聞いた結果があります。(図1)
おせち料理を"自分が作る+家族が作る"、つまり家族全体で見ればおせち料理を手作りしているという割合は、現在6割程度と見ることができます。ただし、"食べていない"という部分を見ると、若い世代ほどおせち料理を食べていないようです。
和食離れという言葉をよく耳にしますが、今回の調査によると、若年層では「和食作りは難しい、下準備が大変」という苦手意識があることがわかりました。しかし、意外にも和食を食べる頻度を今後増やしたい人は20~40代に多く、また、今後作る頻度を増やしたい人も同じ年代で4割前後いる結果となりました。
2012年度に実施した食分野における定点調査データからも、和食へのニーズがあることがわかります。家庭で調理をすることが多いと考えられる女性に着目し、「今後、増やしたいメニュー」について聞いたところ、図2のようになりました。労働時間によって差はあるものの、和洋中のメニュー59項目のなかでも上位にはほとんど和食が並んでおり、和食を食べることを増やしたいというニーズが確かにあるようです。もしも和食の時短・省手間化が進み、調理に対する苦手意識が払拭されるようになれば、和食離れをくいとめられるのではないかと期待しています。
※和洋中59項目中、上位20項目
ちなみに、参考ではありますが、労働時間別の平日夕食の調理時間を比較すると、以下のようになります(図3)。30時間以上働いている女性の場合20~40分未満、30時間未満の場合30~50分未満がボリュームゾーンのようです。
和食がごちそうであるだけではなく、日本の家庭料理でもあり続けてほしいと願いつつ、この年末も親の手伝いに勤しみたいと思います。
みなさま、よいお年をお迎えください。